リズムから。
 
 
 
■ 指先を眺めていると、
「ああ、彼は女性が好きではないのかも知れないな」
 と思えるようなジャズ・メンがいた。
 すこし、指が遊んで、ためらってから鍵盤を押す。
 間の取り方が個性なのだけれども、何人かで演奏していると、音が後ろに隠れてしまうようだった。

■ 外は薄い雨だし、部屋には紫の花もある。
 酒も飲んだし、障子も新しい。
 でも割り切れないので、失恋の歌を聴いた。
 マット・デニスという人で、ピアノを弾きながら歌をうたうのです。
 旨くもないし声量もないけれど、くり返し聴けるのは、野暮ではないからだと私は思っている。